<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第9章 星をねらう ― 三成&姫 ―
「ごめんね、訳わからない事、話して」
「いえ、出来ましたら詳しく知りたいのですが」
「うん。赤星って三成くんが言った星はね、アンタレスって言うの。さそり座って星座の一部で、さそりの心臓にあたるんだよ」
空いている指で空の星々をなぞり、未来の星図の説明をしてくださる舞様。
「さそりは毒を持っているから、天空でさそりの反対側にいる弓矢を持つ射手座が、さそりの心臓めがけて弓を放とうとしているの」
そうなのですね。
さそりの心臓を、射手の弓が狙う。
ならば。
舞様の唇を、私が狙う。
つないでいない反対側の手で、舞様の片頬をそっと包む。
私の目の前の舞様は途端に赤くなり、目線をつい、と私から反らしてしまわれた。
「何故、目を反らすのですか?」
「だ…だって、三成くんの顔が近…ん…」
それ以上、もう何も言わせません。
舞様の唇は、私が狙いましたから、ね。
私達の姿が一つに重なり、夜の暗がりに溶けてゆけば、赤星も移動して去っていきます。
冬の星が夏の星を狙うなら、私も舞様をいつまでも追い掛けて参りますよ。
<終>