<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第89章 青い水の龍 ― 幸村&姫 ―
「いいよ、幸村が見たいもの、私も一緒に見られたら嬉しいもん」
舞の言葉はいつも俺を喜ばせる。
そして、二人で石に寄りかかるものの、誰も居ない、柔らかい風が吹いて、聞こえるのは鳥のさえずりのみ。
俺はつい、触れたくなった舞の肩を抱き寄せ、口付けした。
口付けをしながら、着物の上からからだに触れると、舞が身を捩る。
「ゆき、むらっ…さすがに外では…」
「ああ…じゃあ、外じゃなきゃ良いんだな」
俺はにやりとして、後で宿屋に行くか、と仄めかすと、舞は顔を赤くしてほんの少し頷いた。
「あ、あれ…」
突然、舞が湖を見て、指差しする。
その方向を見ると、何故か湖の一か所だけが激しく波立ち、その波立ったところが更に高く波を立て、やがてぐるぐると回り出し、高さを増して水の竜巻のようになった。
「龍のよう…」
ぽそりと舞が言うのを聞いて、確かに水の龍のように、竜巻が見えるのに気付く。
謙信様はこれを見たのか?
いや、謙信様が竜巻を龍なぞ言うはずない。
すると。
その竜巻の中から、俺と舞は確かに、見た。