<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第89章 青い水の龍 ― 幸村&姫 ―
謙信様から面白い話しを酒の席で聞いた。
国境いの湖に龍が昇る、と。
そんなの酒の席の与太話だと思っていたが、謙信様は龍が昇るのを見たと言う。
謙信様が嘘を言うとも思えず、俺は舞を連れてその湖へ行ってみた。
「疲れたか?大丈夫か?」
俺は、俺の前で馬に乗る舞に声を掛ける。
「ううん、大丈夫だよ」
笑顔でこちらを振り向く舞に、俺は悪いな、と思いながらも馬を走らせる。
間もなく湖に到着し、俺は馬を休ませる用意をし、持ってきた水の入った竹筒を舞に渡す。
「ありがとう」
舞の喉が水を飲むのにこくりと動き、その動きに俺は色気を感じて、背中がぞくりとうずくのを感じた。
二人で大きな石のあるところに寄りかかるように座り、俺は今度は竹皮に包まれたまんじゅうをひとつ舞に渡して、食べるよう促した。
「いただきます…美味しい!」
ふわりとした笑顔を見せる舞に、二人で龍を見たいな、と俺は強く思う。
「悪いな、謙信様の話しを聞いたら、どうしても俺も龍を見たくてな」