<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第88章 龍を見る ― 謙信&姫 ―
「そういう事だ。俺はここにいる龍神に会いにきたのだ」
馬を近くの木につなぎ、俺達は湖のほとりへ歩いた。
「龍神が空へ昇る時ってどんな風になるんでしょう?」
舞が陽の光で湖面が煌めく様を見る横顔を見ながら、俺は言う。
「さぁな、俺も見てみたいのだが、そう簡単には見せてもらえぬらしい」
俺は舞を抱き上げると、近くの大石の側に寄りかかるように座り、あぐらをかいてその中に舞をすっぽりと座らせる。
「け、謙信様…この体勢は、さすがに恥ずかしいです」
「何故恥ずかしがる?ここに居るのはおまえと俺だけだが?」
俺は先程から舞に触れたくてしかたなかったのだ。
片手で舞の頬を持ちあげると、舞の赤くなった顔が目に入る。
俺はそのまま口付けを顔のあちこちに落とし、最後に柔らかい唇に俺の唇を押しあてる。
残りの片手は腰をしっかり抱き留め、片手を頬から後頭部に頭をなぞるように移動させ、俺の口付けから逃れられぬようにする。
龍神よ、俺達の愛を見、恥ずかしがるのなら、今ここで天に駆け上がるのだ。
俺も龍の名を持つ者、龍神の天に昇る姿を見、俺の武運を更に上げておきたい。
微風が吹き始め、舞の長い髪がさらさらと風に乗って流れるように靡く。
やがて、とうとう、俺達は龍神が天へ舞い昇る姿を見るが、その姿はあまりに神々しく、むやみに人に言うものではない、だろう。
見たいなら、自分の目でしかと見に参るが良い。
<終>