<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第88章 龍を見る ― 謙信&姫 ―
馬を飛ばして舞に会いに行く。
俺を惑わせる舞の笑顔に、それでも会いたくてしかたない。
舞はそんなつもりはないだろう。
しかし、俺は清楚な微笑みの下に隠された、艶めき月光のように光る色香に気付いている。
そして、それに狂わされているのも。
「謙信様、お会いしたかったです」
ふわりとした笑顔で馬上にいる俺を見上げる舞。
俺は舞をそこから抱き上げ、俺の前に座らせた。
「少し遠出するが良いか?」
「は、はい…」
舞から少し緊張した返事があった。
未だ馬に乗るのは慣れぬらしい。
馬を走らせ、到着したのは国境いに広がる湖。
水を満々と湛えたその湖には、龍神が空へ昇ると言う伝説があるのだ。
「龍…謙信様の化身がここにいるのですか?」
俺が越後の龍と言われているのを知って、舞が言う。