<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第86章 家を守る女人 ― 姫&家康 ―
「今、何て言ったの?」
舞が家康に聞き直すと、家康はほんの少しむっとした様子を見せて再度言った。
「井伊直虎って領主が俺のところに挨拶にくるから、あんたも一緒に会ってやって」
『井伊直虎って、あの、井伊直虎だよね…!』
舞は驚き、ぽかんと大口を開けたまま家康を見た。
『大河ドラマで主役だった、あの、井伊直虎さんに会えるんだ…!』
家康は大口を開けている舞に眉をひそめ、首を傾げる。
「わかったの?わからないの?」
その声にはっと気が付いて、慌てて舞は返事をする。
「うん、わかったよ!わかったよ!わかったよ!」
しつこい返事に、家康はうんざりした顔をする。
「しつこい、返事は一度で充分」
しかし舞は家康の嫌味どころではなかった。
「ねぇ、井伊直虎って未来で有名なわけ?」
舞の浮かれ振りに気が付いた家康が問う。
「う、うん…家康程じゃないけれど、そこそこ有名な戦国時代の人だよ」
「俺程じゃないけれどって?」