<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第77章 夜の鳥 ― 姫&顕如 ―
「顕如さんの運転って落ち着きますね。穏やかで安定してて」
私が褒めると、顕如さんはにやりとしながら私が赤面するような事を言ってきた。
「ほう…私の運転する車の乗り心地が良い、か…乗り心地が良いのは車だけか?
なんならどこぞで休憩して試してみるとするか?」
「えっ…えっと…えーと。顕如さん、そういう事言うんですね…」
私がしどろもどろになって答えると、顕如さんは破顔した。
「舞が可愛い事を言うから、私もついからかいたくなった」
そんな事を話しているうちに高速道路を降りて、目的地まで、あと少し。
道路の両横に森が有り、フクロウは獲物を探しているのかな?
「そうだな、このくらい暗いところなら、フクロウは今頃、獲物も捕らえているだろう」
そして運転しながら顕如さんはチラリと時計を見る。
「まだ時間はあるな。舞、私の乗り心地を本当に試してみるか?」
顕如さんの声が色気を含み、私の心臓はドキリと音が出るくらい跳ねる。
そういう事、言う人じゃないと思っていたけれど、でも、そんな誘い方は嫌じゃない。
私ははい、と頷き、顕如さんはふ、と笑みを浮かべ、運転しながら私の右ふとももをさっと撫で、車を怪し気な雰囲気のホテルへ回して行った。
Night birds、夜の鳥。
獲物はフクロウに囚われ、私は顕如さんに囚われる。
私達の夜はまだ、続く。
<終>