<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第74章 桃が好き ― 蘭丸&姫 ―
あれ?舞さんだ、何を探しているんだろう?
俺は市で何かを探してうろうろしている舞さんに近付いて声を掛けた。
「舞さん、何を探しているの?」
俺の声にはっとする舞さんだけど、すぐ曖昧な笑顔で俺に返す。
「あ、蘭丸くん。ううん、たいしたものじゃないの」
怪しい。何か俺に隠しているそぶりだ。
でもこういう時って俺に関係するものを探しているんだろうな、こういう勘は良く当たるんだ、俺。
「手伝いが必要なら言って?」
案の定舞さんは首を左右に振る。
「ううん、大丈夫、蘭丸くんの手を煩わせるほどのものじゃないから一人で探せるよ」
こういう時は手伝わないのが一番。だって絶対俺に関係するものだから。
「わかった。じゃ、必要になったらいつでも声を掛けて」
そう言って俺は舞さんと別れて城へ戻った。
しばらくして舞さんが、俺が安土城でよく使っている部屋へやって来た。
「蘭丸くん、居る?」
「どうぞ、いますよ」