<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第70章 妖はいる? ― 幸村&姫 ―
大きな蛇が鎌首もたげて口からしゃーっと長い舌を出している絵に、舞はのけぞった。
「なんだ怖いのか?なら見るの止めるか」
俺は本を見るのを止めるか、と声を掛けた。
「うん、もう見ない、可愛くない…
ジバニャンみたいだと思ってたのに…」
涙目で舞が言うが…じばにゃ?
「違う、ジバニャン。猫の妖怪ですごく可愛いの。
そういう可愛い妖だと思ってたのに…」
どうも舞が想像していた妖と、俺が見せた本の絵があまりに違っていた為、舞はすっかり妖が嫌になってしまったようだ。
「それにしても妖が可愛かったら、妖とは言わねぇんじゃないか?」
俺が本を片付けて言うと、舞はむくれたように言い返してきた。
「でもぉ、妖だって怖いのより可愛いほうが人気が出ると思わない?」
妖が人気でもしようがない気がする。
俺がきっぱり言い切ると、舞は完全にむくれた。
「幸村、もう、いいよ。幸村は妖と結婚すれば良いじゃん」
どうしてそうなるんだ?俺は生涯共にするのは舞ただ一人なんだが?
俺がしれしれと本音を伝えたものだから、流し聞きで済ませようとしていた舞は赤くなって俺の言葉に『うそ…』と固まっていた。
本当に決まってる。俺は一度しか言わない。
俺が生涯を共に生きていきたいのは、舞だからな、妖なんかじゃねーぞ。
<終>