<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第70章 妖はいる? ― 幸村&姫 ―
「妖(あやかし)がいるのかって?見た事はないけど、俺はいると思ってる」
「そうなんだ。幸村は居ると思ってるんだね」
唐突に舞から妖はいると思うか、と聞かれた俺は戸惑いながらも、自分の考えをきっぱり述べた。
見た事はないが存在はする、それが俺の考えだ。
「妖が怖いのか、舞?」
舞に反対に問うて、俺は顔を覗き込む。
妖が怖いなら俺が守ってやるさ、そう返事次第では言うつもりだった。
しかし思ったのと違う返事が舞から戻ってきた。
「ううん、反対。むしろ妖を見てみたいの」
「見てどうすんだよ、妖は喰えないぜ」
「そ、そんなんじゃないよ、食べないよ。どんな姿なのか見てみたいだけだよ」
ずいぶん強気だな。しかし妖なんて誰も見た事ないから想像の絵なんだぜ。
俺は書庫から探して、妖の絵を舞に見せてやった。
「ほら、河童」
かえるのような全身だが二本足で立ち、頭に皿を乗せた不気味な姿に、舞が息を呑むのに気が付いた。
「ほら、大蛇」