<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第67章 恋する心に気付く ― 姫&家康 ―
あの人が見つかって、私は走る。
着物の裾がからげて、みっともなく脛が見えてしまっても構わない。
「家康、さん…!」
安土に来て日の浅い私の事を知っている不穏な輩、それを調査していた家康さんは捕まり、皆さんの探索の結果助けることは出来たけれど、暴力をひどく受けたのか、ぼろ雑巾のように倒れていたという。
顔は殴られてもとの綺麗な顔がわからないくらいに腫れあがり、全身も殴られ、蹴られ、なかには斬られたのか、傷のないところは無いくらいのひどい状態で見つかった。
私は必死で家康さんの看護をする。
お願いします、生きて…!
毎日包帯を取り換え、家康さんの作っていた軟膏を塗り、からだを拭いて傷が化膿していないか調べる。
私が看護をすると言った時、信長様以外のかた達は、私達がうとうとしい状況なのを知っていたから驚いていらしたけれど、私の熱意に根負けして看護を許可してくれた。
今は安土城の空き部屋の一室で、家康さんは眠っていて、毎日信長様も医師を連れて見舞ってくださる。
大丈夫ですよね?
私が毎日医師に問う言葉なのだけれど、医師は頷いてくれるだけ。
でも私も何が大丈夫か、と問うているのか、自分でもわからなくなる。
こうして生きているだけ?目を開けてくれないの?もう家康さんの辛辣な言葉を聞く事も出来ないの?