<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第66章 邂逅 ― 義元&姫 ―
「…市で舞に初めて会ったきっかけは、花瓶の欠片だったね」
俺は思い出して、横に座って団子をほおばる舞に言った。
「…しょ、しょう、でふ、ね…」
口いっぱい団子を入れた舞は、突然俺が話し掛けたから驚いて返事はするが、口の中にものが入っているから変なしゃべりかたになる。
「ああ、悪かったね。ゆっくり団子を咀嚼するんだよ」
俺は急いで呑みこもうとする舞に急ぐ必要はない、と諭す。
あの後舞は、俺が連れて行った骨董屋で、太陽と朱雀が描かれた花瓶を選んだ。
それは使う主にぴったりだ、と舞が言っていたが、まさかその主が織田信長、だとは誰が想像出来るだろう。
俺だって、まさか舞が織田軍の世話役をしているとはわからなかったし。
でもそれを抜きにしても、俺は彼女の美しさ、可憐さ、優しさに惹かれてしかたないんだ。
「舞、食べ終わったら湖まで行ってみようか」
俺は空を少し見上げ、今日の天気なら湖もさぞ綺麗ではないかと考える。
はい、と舞から短く肯定の返答があった。
そして、俺達は湖のほとりに立つ。
他に誰もおらず、湖が太陽の光を受け水面を輝かせているのと、時折鳶が鳴き声をあげながら、高い空を飛んでいるのを見るだけだった。