<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第64章 心に蓋をして、幸を祈る ― 安土城武将&姫 ―
-貴女があのかたのところへ行きたいのであれば。
-仕方ありません、私は貴女の幸せを願って、貴女を見送るだけです。
「どうしても、謙信様の許へ行きたいんです。
謙信様を愛してしまいました」
舞様の真剣な声が広間に響き、私達は舞様を見つめました。
「ほう…越後の龍の許へ、とな。
いつの間に敵方のおとこと恋仲になったものやら」
信長様の口調は、怒るよりもいつの間に、といった感心したような口振りでした。
「あいつ、おんな嫌いじゃなかったのか?」
舞様の発言を面白そうに聞かれ、笑みを浮かべたのは政宗様。
「どうでも良いですよ、本人が良ければ良いんじゃないですか」
呆れた口調でおっしゃるのは家康様。
「信長様がよろしければ良いのではないか」
光秀様は他人事のようです。
「俺は本当は反対だが、舞が上杉謙信を好きになってしまったのなら、何も言うまい」
秀吉様も反対とおっしゃりながらも、結局了承なさっていられる。
「わ、私は反対ですっ…!」
思わず私の口から出てしまった、反論の言葉。
全員が私のほうを見ていらっしゃる。