<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第62章 色変化 ― 義元&姫 ―
そして花畑の帰りに、二人で茶屋へ寄り、酒を一杯つきあってもらう。
「あんまり遅くなると…」
そう言いながら俺の誘いに素直にのってくれる舞。
うん、遅くならないようにするし、ちゃんと近くまで送るよ。
夕陽の照り返しが俺達を染める中、二人で安土の酒を堪能する。
夕陽の中でもきみは美しい…俺は舞が褥で乱れる姿をつい想像してしまう。
きっときみはあえかな声で啼き、男を求めて蠢くのだろう。
俺は、舞のそんな姿を、俺自身で見たくなった。
夕陽が落ちるのは早く、気が付くと空は青暗くなりつつあった。
昇った月を見ながら俺は、舞を送るために一緒に安土の町を歩く。
周りに誰も居ないのを確認し、ぴたりと足を俺は止め、舞をそっと抱き寄せる。
「月明かりに照らされるきみが美しくて、触れたくなった。それだけじゃ、きみを抱く理由には…ならない?」
俺の言葉に、暗くてはっきりとわからないけれど、舞の顔は赤くなっていると思う。
俺は舞の答えを待つけれど、ただ待つだけはしない。
舞の頤をつまみあげ、俺は舞の瞳を見つめ、そのまま口付ける。
ねぇ、きみの声が俺の色を塗り替えていくんだ。
だから、俺に抱かれてくれないかな。
俺の心の願いに、舞は小さく、小さく、頷いた。
<終>