<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第62章 色変化 ― 義元&姫 ―
舞に出会ったのは、この茶屋だったな。
信玄から、安土に珍しくも美味しい羊羹を出す茶屋があると聞いて、教えてもらった茶屋に行ったら、可愛い子がいるって言ってたけれど、居るのはおばさんと若い男の二人。
俺はやれやれと思いながら、それでもその茶屋に腰を落ち着かせ、茶と羊羹を注文した。
出てきた羊羹を、早速一口、口に運ぶと、あんず入りで珍しく、でも美味しい。
そこへ来たのが舞で、俺と出会い、俺は舞の優しさにすぐ惹かれた。
俺の気怠げな様子に、具合でも悪いのかと心配してくれたのが舞だったが、俺はもともとそういう雰囲気の男で、どこか悪い訳ではない。
そんな気遣いが俺には嬉しくて、舞を気にいったのだと、今になって思う。
舞に心配してくれたお礼と言って、俺は何度か舞と約束をし、花畑や湖などあちこち連れて歩き、その都度全身で喜びを溢れさせる舞が、いつの間にか愛しくてならなくなっていた。
ある時、俺は安土の市を巡っていた。
いろいろな町に行って、綺麗なものを収集するのが俺の趣味なんだ。
この安土でもいろいろと店を巡ってる。
しかし綺麗なものを置く店が安土には多くて、選ぶのが大変なんだ。
だから何日も掛けて、何度も店に足を運んで、ようやくこれという一品を選ぶ。
ようやく決めて買った品を持って店を出ると、目の前を舞が歩いている。