<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第61章 堕とされたのは自分 ― 蘭丸&姫 ―
「森蘭丸です、蘭丸とお呼びください、舞姫」
俺が初めて舞さんに会った時、南蛮人から聞いた、女性への挨拶ってやつを披露したら、舞さんは驚き、他の男達が憮然とした顔をしたのを今でも思い出すな。
え?南蛮での女性への挨拶のしかたを知りたい?
仕方ないな、きみだけに教えてあげるよ。
俺は片足を折り曲げひざまずき、自分の右手で舞さんの右手を取り、舞さんの手の甲に軽く口付けしたんだよ。
舞さんったら顔を赤くして可愛いったらありゃしなかった。
俺より本当に年上なのかなぁ、舞さんったら綺麗だし…なにより初心そうだな。
俺は何かと用も無いのに、しょっちゅう舞さんに会うようにし、わざと舞さんのいるところを遠回りして顔を見せ、視界に俺がいるようにしてみたんだ。
「最近、よく、蘭丸くんに会うよね?」
舞さんが俺に言うけれど、当然、俺が仕掛けてるんだもんね。
「そうかもね、俺が舞さんの顔を見たくてうろうろしているから、それで視界に入るのかもね」
にっこり笑顔を作って、舞さんに言ってみたら、途端に舞さんの顔が赤くなった。
「どうしたの?舞さん、顔が赤いよ、熱でも?」
知らん振りして、舞さんの額に俺の手を当てる。
「い、いや、なんでもないよ!」