<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第60章 人生を変える恋 ― 姫&家康 ―
今日も寒いな、そんな事を思いながら、家康が戻ってくるのを外で待つ。
だって、少しでも早く好きな人には会いたいでしょう?
外で待つ事を家康は良く思わないけれど、私が好きでやってるんだもの。
冷たくなった手を、家康が仕方ないね、と言って、きゅっと握ってくれる。
そんな優しいところも大好きなの。
以前は本当にとっつきにくくて話しにくくて、どこから仲良くするためのきっかけを探せば良いのか本当にわからなかったな。
家康の御殿に預けられ、小鹿のわさびと仲良くなって、少しずつ家康の事を知っていって、家康が幼い頃から周囲に頼る人も無いまま、苦労すぎる苦労を背負って生きてきたって知り、私は彼の側で彼を包める人になりたいと思うようになっていったの。
家康ははにかむように笑みを浮かべ、何言ってるのって言うし、私が包める人になりたいって言ったら、今のままで良いって言うし、それじゃあ家康の苦労を癒す人が居ないじゃない?
でも、私の存在自体が癒しだって家康は言ってくれたわ。
私が家康を包みこめる大きな存在じゃなくても、家康には私が帰る存在なんだって言ってくれた。
私が帰る存在…そんな言葉だけで嬉しい。
家康と愛し合うようになった今、それまで家康の居ない生活だったけれど、私はどうやって生きていたのか、今となっては考えられないよ。
現代で家康を知らないままデザイナーになって、歴史に興味のないまま服作りに没頭していたのかもしれないな。