<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第55章 夜を駆ける奇跡 ― 姫&三成 ―
不思議そうに私から眼鏡を受け取る三成くん。
「声を掛けたけど気付かないみたいだから、眼鏡外させてもらったよ」
「そうなのですか。舞様に気付かず申し訳ございません」
丁寧に謝る三成くんに、反対にこちらが読書の邪魔をして申し訳なく思う。
「いや、こっちが読書の邪魔をしちゃったから、謝るのはこっちだよ」
そのうち二人でこっちが、こっちが、と押し問答になってしまった。
「んじゃあ、もう、これはお互い悪かった事にしよう」
私がこう言って終わらせるけれど、三成くんは何だか気に入らないみたい。
「…何か気に入らないって表情してる?」
「舞様ご自身をお悪いと思わせる、自分のふがいなさに腹をたてているのです」
「…は?」
いや、そこまで気にしなくていいよ、だって別にそこまで自分が悪いなんて思ってないし。
「そういう訳には参りません」
あれ?三成くんてこういう人だっけ?何か調子狂うな。
それにこういう事するために会いに来たんじゃないんだけど。
「そういう訳に参らなかったらどうするの?」
もう、意地悪く聞いてしまえ。
「…そうですね…今日は本の代わりに、舞様のお顔をずっと見つめていましょうか」