<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第55章 夜を駆ける奇跡 ― 姫&三成 ―
甘い恋に奇跡はある?
あの人は私の恋心に気付いてないから、こうなったら押して押して押しまくるんだから。
「三成くん、お邪魔します」
書庫に入って声を掛けるけれど、返事は無い。
相変わらず大量の本を前にして、息をするのも忘れたように読書に耽る三成くん。
この集中力は本当にすごいけれど、全く周囲が目に入らないから、やっかいでもあるの。
私はそっと後ろに立ち、三成くんの掛けている眼鏡を外して、自分で掛ける。
うっ、度がすごくて、頭がぐらんぐらんするわ、これ。
三成くんは眼鏡を外されたのに気付かず、でも、本が急に読めなくなったものだから、眉をしかめて本を近づけたり離したり、首を傾げたりし出した。
「三成くん」
もう一度声を掛けると、ようやく私が後ろに立って声を掛けていた事に気が付いてくれた。
「あ、舞様、どうなさいましたか?」
私が取り上げた眼鏡を掛けている事にも気付いてない…?
「はい、これ」
仕方ないから眼鏡を外し、三成くんに返す。
「あれ?どうして舞様が私の眼鏡をお持ちなのですか?」