<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第53章 ごっこ遊び ― 光秀&姫 ―
「何を読んでいる?」
舞が城の廊下に座り、何やら巻き物を見ているのに気付き、近寄って聞く。
「光秀さん、源氏物語ですよ」
舞は微笑むと、見ていた巻き物を俺のほうへ少し寄せて見せた。
「…ほう、これなら読めるのか?」
「いいえ、全く読めません。でも絵を見ているだけで心がときめきます」
字ではなく絵を見ていたか。
「それは何の巻かわかるか?」
ときめく、と言った巻が何の巻か、舞が知っているのか俺は聞いてみた。
「これですか?えーと確か梅枝(うめがえ)と聞きました」
「梅枝の巻がどういう話しか知っているのか?」
「いいえ、全然」
「おまえ、源氏物語を知らないのか?」
「そんな事ないですよ、スケコマシの光源氏の話しでしょう?」
舞は俺の言葉に頬をふくらませて、源氏物語がどういう話しか言う…スケ?
「なんだ、そのスケ、とやらは」
俺は聞いた事のない言葉に内心困惑する。