<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第52章 恋を縫う ― 姫&信長 ―
こんなに私はあのかたを愛していたんだ、と自分の恋心に改めて気付く。
『どうぞ、ご無事で』と、何度も、祈る。
戦勝の報せを伝えてくれたのは、今回城に残っていた光秀さん。
「明日にはお戻りだ。せいぜい大仰に出迎えてやるのだな」
光秀さんは片頬に笑みを浮かべ、私に伝えると、仕事があるから、と、すぐ部屋を出て行ってしまった。
「良かった…!」
信長様がお戻りになる、無事に勝ってお戻りになる。
私は信長様の着物を抱き締めて顔を埋めた。
そうだ、新しい夜着を急いで縫って、明日に着ていただこう。
思い立って、急いで生地を裁って縫い始めた。
私の恋心を一針にこめて。
信長様はお守りとこの夜着を何と言うかしら?
私は信長様と一緒にいられるのが嬉しいから、余計な事とお怒りになっても良いの。
『信長様、お帰りなさい』
早く、言いたい。
そして、一緒にいられなかった夜を、二人の愛で埋めていきたい。
信長様、貴方へ私の恋を縫うの。
<終>