<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第51章 恋の一頁 ― 佐助&姫 ―
「舞さん、突然だけど、戦国ライフを楽しんでるかい?」
「うん、まぁ、楽しんでるかな。楽しまざるを得ないのかもしれないけれど」
「そうか、それは良かった」
舞さんから得られた満面の笑みを心の土産とし、俺は天井裏へ昇り去って行く。
あの日あの時間、何故舞さんが本能寺跡地に居たのかわからない。
けれど俺が計算した時空の歪みに飲み込まれ、タイムトリップに巻き込んでしまった。
初めてこの時代で会った時は青い顔をして、どうして、と怯えていた。
けれど、だんだんと顔色は良くなり、会う度に優しい笑顔を見せてくれる舞さんに惹かれていないと言えば、嘘になるだろう。
もともと魅力的な舞さんだ、すっかり安土の武将達を魅了し、この時代に溶け込んでいる姿を見て、安心すると共に、安土の武将達がうらやましいと言えばこれも嘘ではないだろう。
そうだ、俺はきっと安土の武将達に嫉妬しているのだろう。
舞さんと唯一の現代人仲間でありながら、敵味方と分かれる陣に落ちた事から、一緒に居ることが出来ない。
それは何かあった時に、俺が舞さんを守る事が出来ない事でもあるんだ。
窮地の時、舞さんを守るのは誰だろう?
誰もがきっときっちりと舞さんを守る姿は、目の裏にはっきり見透かす事が出来る。
そして舞さんはその人に恋をしてしまうのではないだろうか?