<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第50章 心を溶かす ― 姫&謙信 ―
静かに音もなく雪が降る。
ひっそりと降る雪を見ていると謙信様を思い出す。
貴方を誰よりもわかっていたい。
心に傷を負った貴方を愛して、貴方の心に寄り添いたい。
そう思う私は無謀なのかな。
謙信様、貴方の難しい心に踏み入れ、戻れなくなった私の恋心を受け止めて欲しい。
貴方に会える度に心はざわめき、出陣されると聞くと夜も眠れなくなる程心配し、貴方の事ばかり考えているよ。
今も閉ざされた牢屋の中で雪を見ながら、謙信様の冷たい表情を思い出す。
きっと笑う事を忘れてしまった表情に、何とか少しでも貴方に生きていく楽しさを思い出して欲しい、そんな事を考える。
冷たい貴方の手に触れてから、私は貴方のからだを温めたいとも思う。
そんなに自分を責めないで、もっと自分を大切にして、そして周りの人からの愛に気が付いて。
想いばかりが溢れて、でも貴方には届かない。
「うさぎ…?こんなに…謙信様が飼ってらっしゃるのですか…?」
ある日、謙信様はたくさんのうさぎを連れて、牢にいらして私の前に座られた。