<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第5章 二人の愛 ― 信長&姫 ―
「貴様に似合うな」
「…そう、でしょうか…」
赤く染まる舞の顔。
そんな恥ずかしがる姿も愛おしい。
安土城天守にて、信長が舞と見ているものは、花嫁衣裳。
幸菱の柄が織り込んだ白無垢を肩に掛けただけだが、舞ははっきり言って、美しい。
「貴様は白無垢がとてもよう似合う。
婚儀まで本来は俺が見るものではないが、これだけ似合うならば、先に貴様の姿を見ておくのも悪くはない」
「…信長様…」
声で舞が照れているのがわかる。
しかし、俺は気掛かりが一つ、あった。
「舞」
俺は声を掛ける。
舞は白無垢を脱ぎ、衣桁に着物を掛けたところだった。
「貴様は本当に500年後の、本来貴様が生活していた場へ、戻らずに良いのか?」
舞は振り返り、大きな黒い瞳を、更に大きく見開いた。
「そんな…今更…当たり前じゃないですか!」