<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第47章 虜になる ― 姫&信玄 ―
貴方にはいつも甘やかされてばかりいる。
そんなの当然、と貴方は笑って言うけれど。
信玄様、私は貴方に相応しい、おとなな女性になりたいよ。
「ん?何を言ってるんだ、舞。きみはそのままで十分魅力的だよ」
朝餉の膳を前にしつつ、私は信玄様に釣り合うような女性になりたい、と伝えた。
でも信玄様は肩をすくめ、にこにこと笑顔を私に向けて言う。
「きみは今のままで良いんだ」
どこが良いのかしら。
落ち着きは無いし、こどもっぽいし、信玄様に釣り合うような色気もないし。
自分の様子と信玄様の様子を比べて、落ち込む素振りをみせる私に、信玄様は優しく言ってくれた。
「舞が舞であれば俺は十分だ。今の舞はとびきり美しいよ」
「もう、信玄様ってば…」
信玄様は私を喜ばせるのがとても上手だよ。
それにとっても器用で、ご自分で大工仕事なんかもしてしまうの。
私のお部屋にある小さい棚は、信玄様が作って私に贈ってくれたもの。
恋仲になる前、春日山城に捕らえられている時に知り、恋仲になってから作ってください、とお願いした、私にとって恋仲になって初めてもらった大切な贈り物。