<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第45章 離れたくない ― 姫&幸村 ―
ぶっきらぼうだな、と思っていたけれど、接してみるとわかる、本当は優しいってこと。
好きになる気持ちがどんどん溢れて、毎日会いたくてたまらない。
「…幸!」
ちょうどお客さんがいなくなった、行商している彼に声を掛ける。
私の声に気が付いて、照れくさい表情で片手を上げてくれた。
「おー」
私の大好きなこの「おー」、いろんな意味がたったこの一言にこもってる。
貴方に会いたくてここに通うんだよ、わかってる?
幸はささっと行商の品物を片付けた。
「…あれ?もう、今日は良いの?」
「…ん。いくぞ」
がしっと手を握られ、どこに行くのかわからないまま引っ張られ連れて行かれたのは、湖の岸辺。
今日は天気が良くて、湖面がきらきら輝いていて、とても綺麗だなぁ。
幸が先に座りこんだので、私も隣に座る。
ごそごそしている幸が懐紙にくるまれた何かを取り出す。
懐紙を開くといつの間に買っていたのか、おまんじゅうが二つ。