<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第4章 じゅもん ― 信玄&姫 ―
かんざしを贈ったら、次の逢瀬にちゃんとそれを着けてくる。
だから、贈り物は要らない訳ではないようだ。
でも、舞は「そんなに私に買っていただいてはもったいないです」と遠慮する。
こんな事を言うおんなも初めてだな。
そして、二人で俺が仮住まいする屋敷まで来る。
「ここは…?」
「俺が安土で仮住まいしている屋敷さ」
その言葉に、少しからだを強張らせ、何を思ったのか顔を赤くする舞。
「おいで」
俺の出した手に、ためらった後、そっと重ねる舞の小さな手。
さぁ、俺の魔法に掛かりなさい。
愛の呪文で俺に堕ちなさい。
あ・い・し・て・る
何度言えば、舞は俺のものになる?
天女が堕ちるまで、何度でも唱えよう。
あ・い・し・て・る
堕ちた天女は天に戻れないくらい、俺のものだという印をつけてしまおう。
俺達は静かに屋敷の中へ足を運び、やがて誰にも邪魔の出来ない時が刻まれる。
<終>