<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第39章 かぐや姫 ― 姫 ―
吐息が、聞こえる。
貴方が柔らかな髪の毛を揺らして、すぐ隣で眠る。
私は情事の後の怠いからだをそっと起こし、貴方の綺麗な寝顔を見下し、起きないように静かに着替える。
気付かれないようにそっと襖を開き、外へ出て、貴方の知らぬ間に去ってゆくわ。
月明かりが道しるべだもの。
夜の闇は私の世界。
誰も知らない私の秘密。
私は月へ還る、そう、かぐや姫。
貴方を愛してしまったけれど、これ以上この世界には居られない。
だから黙って去っていくのを許してね。
月から叫ぶ私の声は小さくて、貴方へはきっと届かない。
声の代わりに。
月の光に私の愛を乗せて、貴方へ届くようにするけれど、気が付いてくれるかしら?
私は月から貴方を見つめているわ。
貴方がどんな形で運命と世界を動かしていくのか。
貴方は私以外のどんな人と愛をするのか。