<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第38章 冬物語 ― 家康&姫 ―
これは本当だ。
すぐ死んでしまいそうな程弱くて細っこしいのに、精神的にはめっきり強くて、何か怖い事があっても必死に答えを探している。
そんな、不思議な子見た事ないから、俺の視線は常にあの子を追い掛けるようになった。
俺を敬語で呼ばなくなって、俺に笑顔を見せるようになって、俺と軽口が叩けるようになって、俺はあの子を知る度、どんどんあの子に惹き込まれるように、なった。
舞は俺にぽすんとからだを持たれかけてくる。
「家康…嬉しい…」
今なら、俺が夢を見ていた、あんたに言いたかった言葉を伝えようか。
俺は舞の小さなからだを抱き締めて、二度と離さないと言う。
…これからが俺達の物語の始まり。
刻む時の中で、俺とあの子が出会う確率はごくごくわずか。
その中で俺達は出会い、そして愛し合う俺達が囁く言葉は悦びに震えてる。
俺と出会ってあんたはどうなの?
あんたの世界に戻れなくて、良いの?
「家康がどこにもいない世界に戻っても嬉しくないよ」
舞の甘い言葉に俺は酔わされる。
だから、あんたに俺の愛を思い切り知ってもらうけど、良いよね?
冬の冷たい空気がまとわりつく中、俺達の間には暖かなからだの熱を伝え合う。
<終>