<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第38章 冬物語 ― 家康&姫 ―
特別な日、俺にはそんな日は無関係だった。
けれど、あの子との出会いから特別なものになった。
初めて会った時から、何だか俺が、今迄会ったおんなとは違っていた、あの子。
「『さん』いらない、敬語もいらない」
いつも敬語でさん付けで挨拶されるのが癪だった。
政宗さんにはさん無しで敬語無しだったから、どうして俺にはそんな距離を置くんだよ。
「家康…で良いの?」
ちょっと上目遣いで問うてくるあの子の瞳に俺はドキリとする。
「…いいよ」
俺は不愛想に返事をする。
そして、今ならあの子の前で告げられるだろうか。
「あんたが気になってしかたない」
みるみるうちに真っ赤に染まるあんたの顔。
「なっ…なんで、私の事…」
へどもどする舞の前で俺は余裕を取り戻す。
「弱くて死にそう。でもあんたは強い。そのしなやかな生き様に俺は興味が湧いた」