<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第4章 じゅもん ― 信玄&姫 ―
佐助から聞いた。
佐助やきみの故郷では、魔法という夢を叶える不思議な言葉がある、と。
俺の、魔法の言葉。
あ・い・し・て・る
舞に何度言ったら、かかってくれるだろうか。
一目惚れ、だった。
安土城下で、幸や佐助と話しているところを見掛けたのが、出会いだった。
一見、どこでもいる町娘と変わりがない。
でも、どこか掴みどころが無く、とんでもなく自分をしっかり持った、イイおんなだった。
俺の周りのおんなは、権力や武田の名前に惹かれただけの蝶ばかりだ。
だから、権力を欲しがらない舞は不思議な存在だ。
「信玄様、お待たせしました」
「なんの。おんなのこを待つのも逢瀬の醍醐味さ?」
舞は俺の言葉で、顔を赤らめる。
「さぁ、行こうか」
俺が左手を出すと、舞はそっと右手を出してきた。
小さな可愛らしい手を握り、俺たちは最近評判の茶屋へ足を運ぶ。