<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第3章 奪いたい ― 政宗 ―
舞の髪を撫で、俺は唇を盗む。
舞は驚いて、口を両手で覆い、俺から飛びすさる。
「なんだよ、俺にとっては挨拶代わりだぜ?」
むやみに口付けしたらダメ!と舞は怒る。
やたらと口付けする訳ないだろ、舞だからするんだ。
秀吉しか目に入らない今の舞に言っても、冗談で済ませちまうだろうが。
しかし、俺は本気だぜ?
そうだな。これから毎日、舞に文を送ろう。
甘い言葉を連ねて、舞が赤面するくらい、愛をしたためてやろう。
俺のもとに、早く、なびけ。
兄ではなく、俺のところへ。
安土の城へ戻る馬の上で、疲れた舞は俺に少しもたれかかる。
甘い香りと柔らかい舞のからだを感じ、俺の全身がぞわりと粟立つ。
城に着くと、秀吉が俺と舞を待っていた。
舞をゆっくりと馬から降ろし、秀吉に俺は言う。
「おまえから絶対舞を奪ってみせる」
舞の肩を抱き寄せ、疲れていないか気に掛ける秀吉に俺ははっきり言う。
俺のものにするからな、宣戦布告だ、秀吉。
<終>