<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第32章 紅葉 ― 光秀&姫 ―
「今年の紅葉のほうが色が深いと思いませんか?」
舞が言うが、俺にしてみれば、昨年も今年も同じ色にしか、見えぬ。
でも針仕事をする舞から見ると、微妙な色の違いを察しているのだろうか。
「色の濃き浅きは俺にはわからぬが、舞がそう思うならそうなのだろうな」
俺が言うと、舞は少しむくれた顔をして言い返してくる。
「そんないい加減な…」
「ああ、一つわかっている事はあるぞ」
俺は片頬をあげ笑みを浮かべると、人差し指でつい、と舞の頬を滑らせる。
「!」
舞の顔が瞬時に赤くなる。
「舞の赤くなった顔の色はいつも同じだ」
「み、みつ、ひで、さん…!」
口をぱくんと開けて、真っ赤になった舞はからかいがいがあって、愛らしい。
「ふ…紅葉と同じ色だな」
そのまま、俺は舞に顔を寄せ、舞の瞳を覗きこみ、唇を触れさせる。
俺は果実にむらがる鳥のように、舞の唇をついばみ、舞のからだを強く抱き締め、更に唇をむさぼる。
来年もこうして、紅葉と舞を堪能したいものだな。
俺は木の実のように色付いた舞の顔を、口付けながら見つめた。
<終>