<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第32章 紅葉 ― 光秀&姫 ―
「光秀さん!」
声を掛けられ振り向くと、舞が少し離れたところに立っていた。
「どうした?」
俺が声を掛けると、舞は小走りで近寄ってきて、何か持っている右手で、俺の頬を撫でた。
「?」
頬を見ると、撫でたのは色づいた紅葉。
「紅葉?」
俺が問うと舞は嬉しそうに微笑み言う。
「はい、去年、一緒に見た紅葉が今年も色づきました!」
ああ、一年前だったか、俺の誕生日に舞に呼ばれて、二人で安土城に植えてある紅葉を一緒に見たのは。
「そうか、あれからもう、一年過ぎたのか」
感慨深そうに俺が言ったのが気になったのか、舞は俺にねだる。
「また、一緒に紅葉を見ませんか?お誕生日は過ぎちゃいましたけど…」
「いいだろう、今から見るか?」
こちらから早速誘うと、舞は少し頬を染めて、こくりと頷いた。
城から少し離れた庭の中に、紅葉はひそやかに植えられ、一本だけ鮮やかに燃えていた。