<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第30章 愛する早さ ― 姫&家康 ―
お礼じゃないと口付けしてくれないの?
私の抗議の眼差しに気が付いて、家康はくすくす笑う。
「お礼じゃなくてもしてあげるよ」
私を抱き寄せ、家康の膝に乗せられる。
聞こえるのは、はらはらと外の木々の葉が舞い落ち、カサカサと落ち葉が風に吹かれる音だけ。
家康の唇が何度も私の唇に触れる。
大好きだよ、離れたくないよ。
お互いの無言の愛が唇を通して伝わる。
そのまま家康が私をそっと横たえる。
翡翠色の瞳が熱に浮いたように輝き、はちみつ色の髪の毛がふわりと私の顔に触れる。
家康の唇が私のからだを伝う。
作った羽織、着たままだね。
私は思い出し、ふふ、と笑うと、家康はちょっとむっとした顔でこちらを見やる。
「羽織、着たまま」
そう言うと、家康はようやく気が付いて羽織を脱ぎ、その手で私の着物の帯を解く。
二人の愛はこれから始まる。
私達の愛する早さは一緒だよ。
だから、そっと私は家康の背中に両腕を回した。
<終>