<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第30章 愛する早さ ― 姫&家康 ―
男と女、愛する早さが違う。
でも、私達は側に、いる。
「家康、頼まれていた羽織、出来たよ」
家康の御殿へ行き、頼まれていた桑染(くわぞめ)色の羽織を風呂敷から取り出す。
「どう?」
家康に羽織ってもらい、腕の動きや襟の位置など見てもらう。
「うん、着心地良いし、腕も動かしやすい。ありがとう」
すっかり私の前では天邪鬼は隠れて、甘くて優しい私だけの家康が現れる。
「気に入ってもらえたら嬉しいよ」
すると、家康の端正な顔が間近に迫り、翡翠色の瞳がじっとこちらを覗く。
「ん…」
途端、唇に優しい暖かさを感じる。
家康の、口付け。
ふわりと甘くて溶けちゃいそうだよ。
「いえ、やす…」
自分の顔がほてるのがわかる。
「舞、羽織のお礼」