<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第29章 本気 ― 信玄&姫 ―
謙信の軒猿にはもったいないな。
俺の三つ者に入らないか声を掛けるが、やっぱり謙信に義理立てして断ってきた。
「佐助くん、頼まれていたもの、出来たよ」
風呂敷包みを解くと、出てきたのは、佐助の新しいと思しき忍者装束。
「やぁ、舞さん、ありがとう。相変わらず仕事が早いね」
佐助は礼を言って装束を受け取ると、自分のからだに当ててみた。
今、着ているものとそんなに変わらない気がするが、何が違うのだろう?
「着心地ですね。後は素材。これは真冬用なんです」
佐助は俺の疑問に、答えを隠す事なく教えてくれた。
舞、どんな依頼にも全力をもって応えるその姿勢、きみは最高のおんなだな。
しばらく三人でたわいない話しをし、俺と舞は佐助の部屋を後にした。
「信玄様、結局一緒にいらして、退屈しませんでしたか?」
「いいや、佐助の最近の動向など知れて良かったよ」
「それなら良いのですけれど」
舞はちょっと首を傾げて俺を見て微笑んだ。
その笑顔は愛らしくて、微笑む唇を盗みたくなる。
盗んでも、良いだろう?
俺は誰も居ないのを見計らって、舞を廊下の壁際に追い込み、彼女の両手を俺の片手で押さえつけた。