<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第28章 おかえりなさい ― 姫&謙信 ―
針子の仕事をしながら、毎日落ち着かない気持ちで過ごす。
数日して帰還の連絡があり、謙信様の白銀の姿が月光の中に浮かぶ。
月を背景に馬に乗る謙信様は、見惚れる程、そして斬れる刃のように美しいと思ったの。
冷たい風が謙信様の上衣をはらみ、なびく様は、まるで竜が天から舞い降りてきたよう。
「今、帰った、舞」
でも謙信様は私の名を呼び、馬から降りて私を抱き締めてくださる。
からだはすっかり冬の風で冷えていらっしゃる。
「謙信様、おからだ、冷えてらっしゃる」
私が言うと、謙信様はふっと片頬に笑みを浮かべる。
「舞、おまえが温めてくれるのだろう?」
もう、どうしてそんなに普通に言えるのかな?
勿論、そのつもり、だけど。
「おかえりなさい…」
でも、その前に。
愛しい謙信様に真っ先に掛ける言葉。
私の許に戻ってきてくださって、ありがとう。
無事のお戻り、お待ちしてました。
私は凍えた謙信様をぎゅっと強く抱き締める。
<終>