第6章 『心得』
緑地を、
目的の場へと突き進む具足の大群が地を蹴り続け士気を高め合う
「もうじき、着くな」
「…………おー」
甲斐までの道中、幸村の隣に馬を寄せた佐助をジッと見やる
「なんかお前やけに清々しい面してねーか?戦は気乗りしねーっていつも言ってんのに」
「…………ちょっとね。それよりさ、良かったね。桜子さん見送りに来てくれて」
「……………。出立の前夜なに話してたんだよ」
「んー?まぁ色々と。とにかくさ、あの子の当日の朝の態度が全てを物語ってるって事。」
「………………………」
すげー顔してたな。
…………だいぶ泣きはらしたんだろう。
必死になって腕にしがみついてきたあの手の余韻がまだ残っている。
佐助が言ってる事が本当なら、
ーーーーーー自分の為に泣いてくれたというのか。
「何を無駄話している。戦場はもう目の前だ、気を引き締めろ」
「「はっ」」
後方から迫る謙信の活により気持ちを切り替えると、前を見据えて馬を走らせたーーーーーーーーーーー
天幕を張った陣営では、合流した織田側の面々と布陣や作戦等の確認をしていた。
「……………この戦略で異論は無いか」
信長の重厚な声が通ると、
信玄が頷き開口する
「ああ。だがまた戦で手を組むのは気持ちの良いものではないな。いくら和陸したとはいえ」
「奇遇だな。俺も同意見だ」
ピリリとした空気が二人を包むと家康が溜め息を吐く
「甲斐を共同統治してるんだからもう仕方無いでしょ。こないだの会議でもこうだったし………」
「俺は闘いが愉しめればなんでもいいがな」
「言っとくけど、あんた暴走するのだけはやめてよね」
口角を上げて呟く謙信に眉を寄せる家康だが、天幕の外から女の甲高い鼻歌が聞こえると更に眉間に皺をつくり額に手を当てた
「ちょっと、遊びに来てるんじゃないんだから………」
そう言いながら出ていくのを横目に幸村が政宗に問う
「なんだよ今の、そっちは女連れてきてんのかよ。余裕だな」
「まあな。今日迎え討つあの野郎、顕如討伐の後からチマチマと不穏な動きをしてたが…………あんな小物なんざここで一刀両断してやる」