第16章 ライジング・サン
信濃・上田城ーーー
閨にて。
掛布を深く被り、
すーすーと寝息をたてて安らかな表情で眠る幸村………
が、
突如……腹部に衝撃が襲いかかった。
「いってぇぇ!!」
何かを落とされたのか、はたまた殴られたのかどちらともいえない感覚と痛みで、ガバッと急いで起き上がる。
ーーー敵襲か!?
鋭い眼光で、素早く枕元に備えてある刀を握り締めた、
時・・・・
「あ」
己の腹にずしりと乗った白肌の脚。
隣から降ってきたのであろうその脚から“本体”へと辿るように視線をずらしていくと…………
寝衣ははだけ、裾は捲れ上がって
太腿や胸元が丸見えのまま大の字になり
幸せそうな顔で未だ夢の中を彷徨っているーーー
俺の妻。
「桜子………」
また、お前の仕業か………。
ったく、寝相が悪いのは相変わらずだな。
ジト目で見やるも、本人はお構い無しに眠りながら笑みを浮かべていた。
「牛カルビ……タン塩……トントロと、ハラミも……あ、ライスは大で……」
むにゃむにゃと訳の分からない寝言をこぼし、時折指で何かをつまむような動作をしていた。
「あーあ、こんなんじゃ冷えるだろーが」
ーーーもう、お前だけの身体じゃねーんだからーーー
蹴り飛ばされていた掛布を手繰り寄せ桜子に被せてやろうとすると、
呼吸を繰り返す毎に上下に揺れる大きな腹が視界に入る。
ーーー………
そっとそこに触れると
ぼこ、と中から手に振動が伝わった。
「お前も桜子に似て寝相悪くなったりしてな。」
ふ、と頬を綻ばせ
掛布で覆い、
愛しい寝顔の額に口付けを落とした。