第15章 フレンドシップ・リレーション
その夜ーーー
荒れ模様だった天気はやがて収まっていき…………
朝には、青い空が広がっていた
「幸ーっ!うりゃっ」
城の庭先では、
藁靴を履きざくざくと雪を掻き分け走り回っていた桜子が助走をつけて幸村に飛び付いた。
「あっぶね!てめ、こんにゃろー」
抱き付いてぶら下がる桜子を遠心力をつけて深い雪の中に軽く放り投げると、直ぐ様起き上がってやり返しにくる。ーーー
笑い声が絶えないその二人の戯れを
褥から出て間もない佐助は通りがかりに眺めていた。
朝早くから何事かと思ったら仲良く雪遊びか………。
朝餉前だっていうのに、元気だなぁ。
しかもお揃いの綿衣着てる。
ペアルックか。ご馳走様。
珍しく表情筋が動いて口元が緩み、
開けられたままの戸板の間から縁側に立つ。
太陽の日が差し、雪にきらきらと反射していた。
そんななか、楽しげに雪玉を投げ合う幸と桜子さん。
まるで子どものように大はしゃぎだ。
うん。二人はこうでなくちゃ。
…………
上手く言い表せないんだけども………
ーーーなんだかとても、幸せな気持ちだーーー
空を見上げ目を閉じ、冬の匂いの心地良さを感じていると・・・
ひゅる〜………とゆるやかに空を切る音が耳に入り、
目を開ける寸前に二つの雪玉が俺の顔面にヒットした。
跳ね返ったそれが縁側に落ちて砕けるのを、雪水で濡れた眼鏡越しに見やる。
「あははっ、命中〜!」
「佐助ー、そんなとこで突っ立ってねーでお前も混ざれよ」
わいわいと騒ぎこちらに手を振る二人。
……………
「……混ざっても良いけど雪合戦なら負けないよ。手裏剣で培った俺の投法はその辺の素人とはワケが違うから」
袖で拭った眼鏡を光らせた佐助は、傍にあった藁靴を履くと庭先に駆け出していったーーー。
ーーー雪が溶けて春になれば
二人は春日山城を離れ、
夫婦になる。
けれど、
こんな関係はこれからもきっと続いていく。
必ず、行くよ。
大切な友人達に会いに。
完