第13章 リーサル・ウェポン
「もぉっ……なにすんの?なんか走ってばっかだよ、今日……」
荒い息を鎮めつつ座布団にドカッと胡座を掻く桜子から少し距離を空けた畳上に、幸村は静かに正座をした。
……………ここは俺の部屋だ。
どこかへ場を移さなくては……と迷っているうにちに、
なんとなく連れ込んでしまった。
密室の空間で二人きり…………
もし欲望のままに襲い掛かったら鉄拳が飛んできそうだ。
しかし殺風景なこの部屋にいても所在無い。
さて、どうしたらいいものか。
そわそわと目を泳がせ今後の展開を熟考していると、呑気にあくびをする桜子がチロリと視線を寄越した。
「ね〜、暇だし相撲でも取る?」
「………。取らね〜よ。」
「じゃあサブミッションの練習相手になってよ」
「は?」
「関節技とか締め技の事。安土にいる友達は得意なんだけどね………私は当て身技専門だから………」
はぁ………まーた色気の無い話が始まったよ。
こいつ体術もやってんだっけ。
筋肉だの技だの………
そんなに強くなろうとして一体全体何を目指してるんだ?
腕を組み怪訝な面持ちで説明を聞いていると、桜子が四つん這いで俺の傍まで近付き上目遣いをしてきたので、心臓が激しく振動した。
………可愛い………!
そしてなんだか格好が厭らしい。
「ど……どーした……?」
恐らく鼻の下が伸びているであろう俺の胸に、そいつは寄りかかり………
緩やかに押し倒してきた。