第1章 『三人』
風が吹き荒れ、雨が地面を打ち続ける。
天が怒りを表すかのように。
「………………いい?」
「うん、オッケーだよ」
「勿論」
声を掛け合い、大きな荷物を持った三人の女達がとあるアパートの一室の前に立つ。
蓮は手にした合鍵を使い、カチャリ……と静かに開けた。
「…………!?」
「あれぇ………?」
「居ねぇし!」
無人の部屋の中を見回す。
「……………一歩遅かった………でも多分まだそこら辺にいるはず………ごめん、追っかけていい?」
「うん、行こ!」
「死ぬ気で走る」
ありがと、と蓮が呟くと二人は背中をぽん、と叩いた。
そして外へ向かって駆け出す。
風の音が耳をすり抜ける。
三人の足音と、息遣いと共に。
目指すは、本能寺跡。
「はぁ………はぁ………はっ………あっ、………いた!!」
探していた人物と、その隣に立つ白衣を着た男の後ろ姿。
ぐんぐん距離が縮まっていく。
あと少し。
あともう少しで……………
「………………………………!!!」
瞬間、強い衝撃と、白い光が五人を包んだ。
眼鏡を掛けた男がこちらを振り返るのが一瞬、見えた。