第9章 『狂愛』
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「はぁ………疲れた………」
山道をひたすら徒歩で移動していた桜子は疲労の色を隠せずにいた
現代とは異なり舗装されていない足場。
草鞋や下駄ではなくスニーカーだというのに
それでもキツい。
疲れと比例して荷物も重く感じる
貰った地図をポケットから出しチェックする。
(この道で合ってる………よね)
吹く風に当たりカサカサと紙が靡く
「今日も天気悪いなぁ………」
天を仰ぐと薄暗い雲が空を支配していた。
ここ暫く晴れた日の記憶は無い。
(雨降ってきたらどこかに身を隠すしかないか………傘なんか持ってないし)
取り敢えず城から出て来たはいいが、
安土に着くまで何日かかるんだろう。
食料は日持ちしそうなものを城の台所から失敬してきた。
少しずつ食べ分ければなんとかなるのでは………
「でもって夜はまさかの野宿か………虫との闘いだな〜……すっげーサバイバル」
薄手だが掛布を鞄に詰めてきて良かった、
と独り言をブツブツ呟いていると
後方から蹄の響きと鈴の音のような優しい声が私を呼んだ
「桜子さん?」
二頭の馬ーーー
その片方に騎乗していたのは志乃だった。
「桜子さん、お一人でどうしたのです?」
「はは……ちょっと安土へ旅行…みたいな。志乃こそどこへ行くの?店は?」
「店は両親に任せて、これから義姉さんのところへお邪魔しようと思って。兄と弟も一緒なんですよ」
そう話す志乃の背後で手綱を握りニコ、と微笑み会釈する男が乗っていた
もう一方の馬を操る男も同様の仕草をしていた
「桜子さん、良かったら乗っていきません?同じ方向ですし、送っていきますよ」
「え?ほんと!?助かるよ!ありがとう志乃!」
良かった…………!
これで不安材料が減った。
志乃に感謝だ。
安堵した桜子は早速馬に跨がった