第3章 不思議なヤツ
O視点
小学校を卒業して新しく入学した中学校。
ランドセルから学生鞄へと変わり、私服が制服に変わっただけで妙に浮かれた。
入学式に来ている新入生は代わり栄えしない見覚えのある顔ばかりだった。
小学校からの生徒が持ち上がりだからそれは仕方ないのかもしれない。
だけど、同じクラスになったヤツに見覚えの無い顔があった。
クラスの中で唯一、他の市から引っ越して来たヤツ。
本当に同じ歳なのかと疑うほど落ち着いてる。
女子達がチラチラと視線を送っているのに当の本人はまったく気にせず、ただ静かに何かを考えているようにジッと俯いていた。
藤原優仁。
本当は人の名前を覚えるのは遅いほうだ。
だけど、一発で覚えたのには理由があった。
入学式の後、クラスで自己紹介などを終えて解散となった時、小学校からの持ち上がりの友人達が興味本位にソイツを呼んだ。
そこで軽く話した時、誕生日と血液型が一緒なのだと知った。
それだけの事なのに何となくコイツと仲良くなれると思った。
「宜しく、大野君」
「智でいいよ」
「え?」
「大野君とかなんか、変な感じするからさ」
「なっなら、わたっじゃなくて僕も優仁でいいよ」
「おう、優仁な」
そう交わした時の嬉しそうに笑った顔は、男に対して変かもしれないけど可愛いと思った。
タブンそこにいた全員が同じ事を思ったのか皆何となく気まずそうに視線を彷徨わせていた。
席も前後で近くて話す事が増えた。
優仁は頭が良い上に性格も良い。
五月蝿くないし、かと言って暗いわけでもない。
運動神経もかなり良いほうだと思う。
こんな完璧なヤツがいるもんなんだなぁと思っていれぱ、家まで物凄い金持ちとココまでくればいっそ笑えた。
それだけ完璧なのに、それを鼻にかけた様子もない。
だから優仁は男女問わずに人気者だ。
話し上手ではない自分といても疲れるのでは?と思ったけど優仁はそんなことある訳ないと言い切った。
「智君と話すの楽しいよ」
そんな風に笑って言われると本気で照れた。