第5章 夢への交響曲
【歌side】
…なぁ、俺、蒼依のこと好きだ
轟君に告白された。そして熱い抱擁までされた。むしろ、轟君の腕の中はとても暖かった。でもそれと同時に頭の中で拒絶の声が響いた。
―――おまえが幸せになっていいはずがない。
だから思わず、轟君を拒絶してしまった。彼は泣きそうな顔をしていた。なのに。
轟「拒絶されても、俺の気持ちは変わらない。」
…どうして彼は、そんな簡単に言えるのだろう。
私の個性を知ればみんな離れていった。それはきっとこのクラスのだれもが一緒だ。
そう思っていたのに。
切「おーい、歌ちゃーん」
『…ん?』
芦「授業終わったよん!」
『あれ、いつの間に…。』
八「従業中、ずうっと心ここにあらず、でしたわよ?」
『ご、ごめん。考え事してた。』
梅「感心しないわね。悩み事でもあるの?」
『…そんなんじゃないよ。ごめん、心配かけて』
耳「話なら聞くけど…。なんかあった?」
『いや、何もないよ?大丈夫!』
皆が私のことを心配してか、声をかけてくる。それだけでなんだか、心が温かくなる気がした。
ただ、クラスのみんなに本心を明かせないことが、心がチクリ、と痛んだ。
それもつかの間、私の前に人影ができる。顔を上げると、相駆らわずの仏頂面の爆豪が立っていた。
『…えっと、何…?』
そのまま、何も言わずに私に向けて人差し指を向ける。
爆「俺が1位になったら、俺のモンになれ。」
…………は?
「「はぁーーーーーーーーーーー?!」」
「「きゃーーーーー!!!」」
教室中から黄色い歓声と、驚愕の声が響く。
えっ、なにこれ。待って。思考回路が追いつかない。
爆「おい、返事は?!」
『………えっと、私はモノじゃありません…?』
爆「ちげぇだろ!カス!俺が!1位になったら!お前は俺と付き合えって言ってんだよ!!!カス!!死ね!!」
爆豪は言いたいことだけ言うと、私の前から去っていく。
…これは、愛の告白…で、間違いないのよね…?
爆豪らしいっちゃらしいが、二度もカス呼ばわりされ、死刑宣告までされた。あいつ、本当に私のこと好きなのか?
芦「あの爆豪が!!歌に告白だよ?!」
葉「やばい!なにこの少女漫画的展開!」
梅「ただ当の本人はわけわかんないって顔してるわね。」