第5章 夢への交響曲
それから爆豪に死刑宣告されてから、轟君と教室をでて、屋上へとやってきた。なんか、教室を出るとき、みんなに温かい目で見られてた…。
『屋上ってことは…いつもの?』
敵襲来事件の前から、轟君は私の歌を気に入ったため、お昼休みに必ず屋上で歌を歌う約束をしていたのだが。
轟「いや、今日は話をしたい。」
『話?』
轟「……俺の個性の話だ。」
『轟君の個性…?』
私は思わず首をかしげてしまった。
そんな私をよそに彼は日陰へと移動し、私をその横へと座るように促した。そして、ゆっくりと轟君は自分個性について語る。
轟「…個性婚って、知ってるか…?」
『……うん。』
個性婚。少し前の代で問題となった社会問題。
自身の個性をより進化して継がせるためだけに配偶者を選び
結婚を強いる…倫理観の欠落した前時代的発想。
轟君からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
『轟君のお父さんは、エンデヴァーだっけ…。』
轟「あぁ。あいつは、俺を使ってオールマイトを超えることで自身の欲求を満たそうとした。」
私はあまりの重い話に言葉がうまく出てこない。
轟「…歌に話そうと思った理由は、お前が自分の個性の話をしてくれたから。」
『そんな……私は、大した話してないよ』
私の個性の話と、轟君の出生の話じゃ、どう考えても割合が轟君のほうが重い。
轟「でも、話してくれた。俺からしてみれば、爆豪とようやく同列に見てもらえたってことだ」
『なんでそこで爆豪が出てくるの?』
轟「……ほんとに気付いてないんだな。まぁ俺としてはそのほうが助かるが」
『話の流れが全く見えない…。』
轟「……一応、確認だが。歌は好きなやつはいないのか」
『人の話聞いてた?…好きって、ラブ?ライク?』
轟「ラブのほうだ」
轟君からそういう話が出るとは思わなかった。
―――お前は、化け物なんだろ?そんなやつ、好きになれねぇわ
―――お前のこと、いいやつだとは思ってたけど…、個性がそれじゃあ…ちょっと怖ぇわ。
―――あなたのこと、愛してくれる人なんて、いやしないわ!この化け物!
頭にこだまする声。それらが私の心を固い鎖でからめ捕る。
誰かに愛されたい。だけど、愛される資格なんて持ち合わせていない。
『………ラブのほうは、もう諦めてるから。』