第4章 胸に秘めし狂詩曲
【歌side】
三人が帰った後、私はその日の夕方に退院となった。外傷・後遺症ともに何事もなかったそうだ。
…まぁそりゃそうなのだが。
病院から出てくると空は赤く染まっており、なんだか物悲しい気分になった。
昼間、自分の真の個性について轟君と切島君に打ち明けた。自分で自分の個性について話をしていて、苦しくなった。
―――どうして、私たちのために、個性を使わないの?!
―――お前の個性は使い物にならんな。
頭の中で響くその声は、どんなに年月を重ねても消えることはない。あーあ、せっかく幸せ生活を手に入れたと思ったのに。これでまた何人か離れていくのかな…。そしたらまた一人ぼっちだ。
『いやだなぁ…。』
?「何が嫌なのだ?」
声のしたほうを見ると、クラス委員長・飯田君が目の前にいた。小さくつぶやいたはずなのに、聞かれていたらしい…。恥ずかしいやつじゃん!
『あ、あれ?今日は用事があるって…。』
天「その用事も終わったから来てみたら、何やら呆然としていたからな。僭越ながら、声をかけさえてもらった。」
『な、なるほど…。』
天「…家はどっち方面だ?送っていこう」
『えっ、いいよ一人で帰れるよ?』
天「何を言っている!女性を一人で歩かせるわけにはいかないのだ!!」
眼鏡をくいっと持ち上げながら相変わらずな優等生発言に、安心する自分がいた。
『なら、お言葉に甘えて…。』
天「うむ。では行こう」
飯田君と並んで夕焼けに染まる街を歩く。しばらく「家はどこだ?」『実家は鎌倉のほうなんだ』などと他愛もない会話を飯田君とやり取りする。ふと、すれ違うカップルと思わしき学生とすれ違う。思わずそれに足を止める。
『………。』
天「ん?急に足を止めてどうした?」
『ん?んー…なんだか、羨ましいなって』
天「なんだ、ヒーローを目指すものとして、そんな色恋にうつつを抜かしている暇などないのだぞ!」
『いや、……まぁそうだよね。ごめん』
別に色恋にあこがれていたわけではない。
ただ普通に誰かと一緒に何かして過ごしたり、
自分が好きな人と同じ時間を共有したり、
好きな人から愛されるのが、羨ましいなって。
…そう思ったのだが、口に出すのをやめた。
――――これ以上誰かに本心をさらけ出すのが怖くなってしまったのだ