第4章 胸に秘めし狂詩曲
【相澤side】
同じ病院に優雅崎も搬送された、という情報を聞き、慣れないが優雅崎の状態を確認しに来た。
『…言霊って、言葉で人を操り、傷つけ…最悪殺すことだってできる。幼いころは、どうして隠さなきゃいけないかわからなかった。
でも、その個性を知って多くの大人が私を利用しようとしたわ。…でも結局個性を使う使わないは私の意思。うまく扱えないからって理由で私を恐れていったわ…。』
扉を開けようとしたとき、そんな言葉が病室の外から聞こえ、扉を開けるのをやめた。
そして、そのまま扉に寄りかかり、中の会話に耳を傾ける。
切「じゃあ歌ちゃんが個性を隠してたのも…。」
『うん、みんなが私を恐れて離れていくのが怖かったの。みんなが思ってる以上に言霊は凶暴で恐ろしいから。
普段は、自分で自分の個性にストッパーをかけているけど、昨日のような…自分で自分を抑えられなくなったりしたらストッパーが外れちゃうの。』
…なんだ、自分で自分の個性についてちゃんと理解してるんじゃないか。
正直、最初の頃、入学願書を見て教員全員の間に衝撃が走った。もし、この個性が扱えなければ、ほかの生徒・教員に被害が及ぶことも考えた。だが、校長の鶴の一声で入学試験を許可した。
そしたら、まぁ…うまいこと扱えているというか、そういう変換の仕方があったのか、と教員の間での反感は激減した。…まだ何人かは、優雅崎のことを個人的によく思ってないやつも多いが。
『…爆豪といっくん、緑谷くんとは幼馴染だったの。小さいころ、個性を暴走させたことがあって…。それで二人は私の個性について知ってるの。』
つまり、優雅崎の真の個性について知っているのは教員とこの中にいる生徒だけ…。
相「まったく、めんどくせぇ…。」
俺は小さくそうつぶやいて、天井を仰ぎ見た。
意外にも優雅崎の苦しみについて知ってしまった。こいつは、小さい身体に似合わないくらい強大な個性を背負っちまったばかりに、波乱な人生を送ってきたことを初めて痛感した。
相「…柄にもねぇことするもんじゃねぇな…。」
優雅崎の苦しみを知らないほうが、周りとも平等に接することができただろうに…。俺はこれから先のことが不安に思えた。