第3章 激動の序章曲
【轟side】
『ルダンジャール ロム マヤン』
歌が小さくそうつぶやくのが聞こえた。
少し前、オールマイトが吹き飛ばされたあたりから様子がおかしかった。そして、その言葉をつぶやいたかと思えば、歌のまとう空気が、雰囲気が変わった。
ぞくり、と背中に悪寒が走る。プロヒーローの気迫とはまた違う何か。それに思わず俺は鳥肌が止まらなかった。
『“敵連合よ、私の歌を聴きなさい”』
そうはっきりとした声で敵連合に告げると歌い始めた。
靄「なっ、なんだこの歌は…?!」
親「治癒の個性じゃない…、しかも、耳をふさいでも脳に直接響く…」
歌の歌に敵連合は、もがき、苦しんでいた。俺たちは呆然としていた。その歌は今まで聞いてきた歌声とは全く違うものだった。
初めて歌の歌を聴いたとき心が晴れるような、とても暖かな気持ちに包まれた。もっとこの歌を聴いていたいとも思えるような歌声だった。
だが、この歌声は、違った。
まるで氷のつぶてをぶつけられたような冷たいはずなのに、そこには“命”が見えた。まるで言葉一つ一つに命が宿り、その言葉で相手を、敵を倒していくような。
これは
轟「なん…だ?」
思わずつぶやいてしまった。それを聞いた緑谷がそっと教えてくれる。
緑「これが歌の本当の個性なんだ。」
轟「…どいういことだ」
緑「さっきバスの中でみんながみんなの個性について話をしてたけど、歌の個性は歌魂じゃなくて、言霊なんだ。」
轟「こと…だま」
どういうことだ。自己紹介でも歌魂だって、言ってたはず…なのに。あまりの真実に、頭が混乱してるところを爆豪がさらに付け加えをしてくれる。
爆「歌の個性はあまりに強すぎるから、歌に変換して思いを込めて歌う歌魂ってことにしてんだよ。けど実際は言葉に思いを込めて相手を倒したりすることができんだ。」
轟「…詳しいんだな」
爆「まぁな、お前とは違ってあいつといる時間は俺のほうが長げぇ。デクよりも、な」
ギロリ、と緑谷をにらみつけるとビクリ、と体を震わせる緑谷。